肥満であることは健康上良くないですが,もっと良くないのは内臓脂肪が多いことです!
そして,高血圧などの生活習慣病を併発している内臓脂肪が蓄積された肥満者のことをメタボリックシンドローム患者と呼びます.
内臓脂肪が多い人は心筋梗塞や脳梗塞のいった命に関わる病気になりやすいことはよく知られています.さらに,運動によってそれらの内臓脂肪を減らすことも可能であることは事実ですが,具体的にはどのような運動が内臓脂肪の減少に有効であるのか科学的根拠に基づいて考えていきたいと思います.
まず,運動というものは
1 運動の種類(ウォーキング,筋力トレーニングなど)
2 運動の強度(低強度,中強度,高強度など)
3 運動の実施時間
これらの組み合わせにより
得られる効果が異なります.
この中で,もっとも重要な要因は「運動の強度」です.
では,内臓脂肪を減少させることが科学的に証明されている運動強度とはどれなのでしょうか?
結論から述べさせていただくと「高強度トレーニング」です.
ここで,実際の研究内容をご紹介します1).身体活動量により中強度,高強度に2つのグループに分けられた人たちのメタボリックシンドローム有病率を比べた研究です.
この結果,高強度の身体活動量である方がメタボリックシンドロームの有病率が低かった結果となっています.
さらに,この研究の非常に重要なことは同じエネルギー消費量で比べても中強度の身体活動量より高強度な身体活動量である方がメタボリックシンドロームに有病率が低かったということです.
中強度の運動であれば高強度の運動と同等のエネルギーを消費するにはもちろん時間がかかりますが,時間をかけて中強度の運動を実施するよりも短時間の高強度の運動が内臓脂肪が蓄積してしまうメタボリックシンドロームを防ぐことができる可能性が高い!ということを示唆しています.
つまり,内臓脂肪の減少にはエネルギー消費量はそれほど重要ではないのかもしれません.したがって,内臓脂肪の減少に必要なのはエネルギー消費量を稼ぐことではなく強い強度で運動を実施することと言えます.
次に,内臓脂肪を減少させるための「運動の頻度」に関して考えていきたいと思います.平日は仕事をしているから運動をする時間は確保出来ない...
だけど,週末は時間があるから運動ができそう!
こんな方が多いと思いますが,
週末にまとめて運動することは内臓脂肪の減少に効果があるのでしょうか?
このように週末にまとめて運動するライフスタイルのことを
「週末戦士」(weekend warrior) と呼びます.
十分な運動量を確保しているということが前提ですと
運動の頻度(実施日数)はメタボリックシンドロームの有病率と関連がなかったということが報告されています2).
メタボックシンドロームの予備段階にあるような若年者であれば一度にまとめて運動をする体力はある場合が多いので必要な運動量をまとめて週末に実施する週末戦士型のライフスタイルでも内臓脂肪の減少に効果があるかもしれません.
それでも,どうしても運動時間は確保できないという方向けに日常生活に取り入れることができる方法をご提案させていただきます.
それは,「座りっぱなし,寝っぱなし」を避けるということです.
座りっぱなしの時間が長いと内臓脂肪が蓄積されることが原因となり発症する心臓病や生活習慣病に罹患しやすいことが
近年,明らかにされつつあります.コロナ禍で在宅勤務やデスクワークの方が増えていることはよくニュースで耳にしますがこのような座りっぱなしは可能な限り避けなくてはなりません.
具体的には30分に一度は歩行や爪先立ち,背伸びなど簡単は運動を2〜3分行うことが重要です.
仕事場では,立ったままの会議や
長時間の座りっぱなしが続くと何らかの方法で通知されるシステムの導入などを考慮する必要があります.
ここまでの内容をまとめていきます.
1 運動強度は高強度である方が内臓脂肪の減少に有効です.だらだらと低強度の運動を行うのではなく,短時間でも高強度の運動に挑戦しましょう.
2 平日は仕事をしていて,週末にまとめて運動を行う週末戦士でも,メタボリックシンドロームの改善に効果的です.体力に自信のある方は,時間の取れるときに,まとめて運動をやってしまいましょう.
3 座りっぱなしを避ける必要があります.30分に一度は立ち上がって簡単な運動を日常生活に取り入れていきましょう.
引用文献
1) Janssen I, et al: Vigorous intensity physical activity is related to the metabolic syndrome independent of the physical activity dose. Int J Epidemiol 2012;41:1132-1140
2) Clarke J, et al: Is the frequency of weekly moderate-to-vigorous physical activity associated with the metabolic syndrome in Canadian adults?. Appl PhysiolNutr Metab 2013;38:773-778
参考文献
臨床スポーツ医学 内科系疾患の運動療法.文光堂 P368―372
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ライター:理学療法士くん/理学療法士
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