食品メーカーの職種紹介で「SCM」「サプライチェーン」「物流」という言葉を見かけて、「物流とSCMは同じ?」と思った方も多いのではないでしょうか。
「SCMって何の略?具体的に何をするの?」
「物流や生産管理とはどう違うの?」
「どんな人が向いているの?」
この記事では、食品メーカーのSCM(サプライチェーン・マネジメント)について、仕事内容、物流・生産管理・購買との違い、食品ならではの課題、向いている人まで、公的機関の情報と食品メーカーの公式採用情報をもとにわかりやすく解説します。
この記事でわかること
- SCM(サプライチェーン・マネジメント)とは何か
- SCMと物流の違い
- 食品メーカーのSCMの仕事内容
- 食品のサプライチェーンが抱える課題(物流の2024年問題・食品ロス)
- SCMに向いている人
SCMとは?食品メーカーでの意味
SCM(Supply Chain Management:サプライチェーン・マネジメント)は、原材料の調達から、製造、保管、輸送、販売、お客様の手元に届くまでの「モノと情報の流れ」全体を、ひとつのつながり(チェーン)として最適に管理することです。
食品メーカーの場合、サプライチェーンはおおむね次のようにつながっています。
- 産地・原材料メーカーからの原材料・包装材料の調達
- 工場での製造
- 工場倉庫・物流センターでの保管
- 卸・小売の物流センターへの輸送
- スーパー、コンビニ、ドラッグストア、EC などの店頭・販売
- お客様の購入・消費
SCMの仕事は、この流れの中で「どこかで足りない・余る・遅れる」が起きないように、需要の予測、生産計画、在庫、輸送をつなげて調整することです。
SCMと物流の違い
SCMと物流は混同されやすい言葉ですが、見ている範囲が異なります。
| 項目 | 物流(ロジスティクス) | SCM(サプライチェーン・マネジメント) |
|---|---|---|
| 範囲 | 商品の保管・荷役・包装・輸送・配送など、モノを動かす機能 | 調達から販売までの流れ全体。物流はその一部 |
| 主な目的 | 商品を正確に、効率よく、決められた場所へ運ぶ | 需要と供給を合わせ、欠品・過剰在庫・無駄なコストを全体で減らす |
| 関わる相手 | 倉庫、運送会社、物流センター | 購買、生産管理、営業、物流、取引先、仕入先 |
| 主な仕事 | 配車・倉庫管理・在庫の入出庫・輸送コスト管理 | 需要予測、生産・販売・在庫計画の統合(S&OP)、拠点配置、全体最適の設計 |
森永乳業の採用ページでは、物流の仕事を「需要と供給のバランスを見極め、製造、受注、配送までの商品の一連の動きを管理する」仕事として紹介しています〔出典1〕。企業によっては、このように「物流」という部署名でSCMに近い役割を担っていることもあります。
簡単にいえば、物流は「運ぶ・保管する」の専門領域、SCMは「流れ全体を設計し、つなげる」仕事です。
食品メーカーのSCMの仕事内容
企業によって担当範囲は異なりますが、SCM部門の主な仕事には次のようなものがあります。
- 需要予測:過去の販売実績、季節、気温、販促、取引先の計画をもとに、商品ごとの売れる量を予測する
- 販売・生産・在庫計画の統合:営業の販売計画、工場の生産能力、在庫の状況をすり合わせ、全体の計画をつくる
- 在庫管理:賞味期限を考慮しながら、欠品も過剰在庫も起こさない在庫水準を決める
- 物流ネットワークの設計:工場・物流センターの配置、輸送ルート、共同配送などを検討する
- 取引先との連携:小売・卸の発注リードタイムや納品条件を調整する
- コスト管理:輸送費・保管費・廃棄ロスを把握し、改善する
- システム活用:需給計画システム、在庫管理システム、データ分析ツールの運用
生産管理が「工場の中の計画」、購買・調達が「原材料の仕入れ」を担うのに対して、SCMはこれらと営業・物流を横断してつなぐ役割です。それぞれの仕事内容は、こちらの記事で解説しています。
▶ 食品メーカーの生産管理とは?仕事内容・年収・向いている人を解説
▶ 食品メーカーの購買・調達とは?仕事内容・必要なスキルを解説
食品のサプライチェーンが抱える課題
食品メーカーのSCMが注目されている背景には、食品ならではの課題があります。
1. 物流の2024年問題
経済産業省・農林水産省・国土交通省のガイドラインによると、2024年4月からトラックドライバーの時間外労働の上限が年間960時間となり、何も対策を講じなければ、2024年度には輸送能力が約14%不足し、2030年度には約34%不足すると推計されています〔出典2〕。
食品は重量があり、温度管理が必要な商品も多いため、輸送力の不足は直接「商品が届かない」リスクにつながります。納品リードタイムの見直し、共同配送、パレット輸送への切り替えなどは、食品メーカーのSCM部門が取り組む代表的なテーマです。
2. 食品ロス
環境省の推計によると、令和6年度の日本の食品ロス量は約461万トンで、そのうち事業系が約237万トン、家庭系が約224万トンとされています〔出典3〕。
食品メーカーにとって、売れ残りや賞味期限切れによる廃棄は、コストであると同時に社会的な課題でもあります。需要予測の精度を上げ、適正な在庫を保つことは、食品ロスを減らすことにも直結します。
3. 需要の変動と賞味期限
食品は、天候、季節、テレビやSNSでの話題、キャンペーンなどで需要が大きく動きます。一方で賞味期限があるため、「余裕を持って多めにつくる」ことができません。この「欠品させない」と「廃棄しない」の両立が、食品SCMのいちばん難しいところです。
SCMに求められるスキル
- データ分析力:販売実績や在庫データから傾向を読み、需要予測や計画に生かす力
- 全体を見る力:自部門の都合ではなく、調達から販売までの全体にとって最適な判断をする視点
- 調整・交渉力:営業、工場、物流、取引先など、利害の異なる相手の間で合意をつくる力
- システム・ITの理解:需給計画や在庫管理のシステム、表計算ソフトの実務力
- 食品と物流の知識:賞味期限、温度帯(常温・冷蔵・冷凍)、納品条件などの基礎知識
SCMになるには?
SCM専門の資格は必須ではなく、理系・文系どちらからも目指せます。新卒では、森永乳業のように「物流」を職種として募集している企業もあり〔出典1〕、総合職として入社したのち、営業や生産管理、物流を経験してからSCM部門へ異動する流れも一般的です。
中途採用では、食品メーカーや小売・卸での需給管理・物流・生産管理の経験、物流会社やコンサルティング会社でのサプライチェーン業務の経験が評価されやすい傾向があります。
食品メーカー全体の就職活動の進め方は、こちらの記事も参考にしてください。
▶ 食品メーカーに就職するには?必要な学歴・資格・就活対策を解説
SCMに向いている人
- 数字やデータから「次に何が起きるか」を考えるのが好きな人
- 部分ではなく、全体の流れを見て判断できる人
- 立場の違う人の間に立って、調整や交渉を進められる人
- 欠品や廃棄を減らすことに、社会的なやりがいを感じられる人
- システムや新しい仕組みづくりに関心がある人
反対に、「現場で商品を動かす仕事がしたい」人は物流や製造、「工場の中の計画に集中したい」人は生産管理のほうが合っている場合があります。
まとめ
- SCMは、調達から販売までの「モノと情報の流れ」全体を最適に管理すること。物流はその中の「運ぶ・保管する」領域
- 食品メーカーのSCMは、需要予測、販売・生産・在庫計画の統合、在庫管理、物流ネットワーク設計などを担う
- 物流の2024年問題(2024年度に輸送能力が約14%不足、2030年度に約34%不足の推計)と食品ロス(令和6年度 約461万トン)が、食品SCMの大きな課題
- 「欠品させない」と「廃棄しない」を両立させることが、食品SCMの難しさであり、やりがい
- 必須資格はなく、データ分析力・全体を見る力・調整力が求められる
SCMは、食品メーカーの中で「つくる」と「売る」をつなぎ、商品が無駄なくお客様に届くようにする仕事です。表には出にくいものの、食品ロスの削減や物流の課題解決といった社会的なテーマに、企業の中から取り組める職種といえます。
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出典
- 森永乳業株式会社 RECRUITING SITE「職種紹介」 https://saiyo.morinagamilk.co.jp/job-people/job.html(2026年10月3日確認)
- 経済産業省・農林水産省・国土交通省「物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン」 https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001612796.pdf(2026年10月3日確認)
- 環境省「令和6年度の食品ロス量の推計」報道発表(2026年6月30日) https://www.env.go.jp/press/press_05155.html(2026年10月3日確認)

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